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切手

切手とは、料を前納したことを証明するための証紙のことをいいます。郵便事業で行わられるサービスにおいて使用されます。個人の趣味として収集対象となることも多いです。また、宣伝媒体として用いられることもあります。

切手(きって、英語: stamp)は、郵便事業で行われる諸々のサービスの、料前納を証明する証紙である。郵便物に貼って差し出されることが多いため、「郵便切手」とも呼称する。時に宣伝媒体として用いられたり、古銭・紙幣や骨董品と同様に趣味の収集対象(切手収集、郵便趣味)となったりする。

切手」という名称はもともとは持参人に表示された商品を引き渡す一種の商品券を意味するもので、当初は「切符手形」と称していたが、その後、略されて切手とされるようになった。江戸時代には通称名を「蔵預かり切手」と呼称した。米切手はその代表格であるといわれ、蔵屋敷などの交換所で商品と交換することができた。やがてこれらの手法が民間にも派生し、1777年には大阪の菓子屋、虎屋伊織が饅頭切手を発売した。以後、羊羹やうなぎ、鰹節、酒などの切手も江戸を含む各都市の商家で発売され、庶民に定着した。そのため、明治時代に郵便料の支払いを証明する意味で「切手」が使われるようになった際には、他の類似証券類が別の名称を区別して扱われるようになった。現在では、切手といえば、郵便料を前納したことを証明するために手紙などの郵便物に貼る金券の一種の紙片のことを表すようになった。広く認知されている郵便と切手の関連性から、JPタワー内の日本郵便が手がけた初の商業施設にも「KITTE」の愛称がつけられている。

英語では切手は "stamp"(スタンプ)というが、これには証紙の意味もある。もともとイギリスでは言論統制の手段として新聞に税をかけていたが、その新聞税納税の証拠として証紙が印刷されていた。この証紙のことを "stamp" と呼称していたため、同様に郵便税(郵便料)を前納した証拠としてそのまま使われるようになった。そのような出自もあってか、英連邦諸国では、切手は印紙としての機能も持っていた。

現在、多くの国の郵便事業者は、郵便のみにその役割を限定され、切手の役割も郵便物の料前納に限られている。しかし、たとえばかつての日本では、郵便事業者が電話や電信、貯なども管轄していたため、これらさまざまな料の納入にも用いられていた。また、イギリスなど、国によっては収入印紙などとしても用いられていた。また、郵便切手は郵便料の徴収だけでなく、国家的政策や文化の宣伝など宣伝媒体とする実用目的があるほか、古銭や骨董品と同様に収集品の対象となっており、郵政事業の重要な財源の一つとなっている。

多くは小さな紙に印刷されたものである。ほとんどは長方形で、サイズは比較的小型である日本の普通切手で一辺が18 - 20ミリメートル程度である。記念切手や特殊切手には縦長や横長のものが多く、最大で一辺50ミリメートル程度まである。ただし、形、サイズともに例外が少なからず存在する。多くの場合、複数枚をまとめたシートとして印刷される。1枚ずつ切り離せるよう「目打」というミシン目が穿孔されていて、裏には糊が引かれている。シートから剥がすと、すぐに貼って使用できるシール式の切手も作られている。

同様のものとしてメータースタンプがある。また、官製はがき、郵便書簡(ミニレター)、レターパックプラス/ライト、廃止済みのエクスパックや切手つき封筒のように、あらかじめ切手の代わりとなる料額印面が刷り込まれた形で郵政から発行されているはがき・封筒・便箋があり、これらはステーショナリーと呼ぶ。ただし、現書留封筒のように、郵便局で販売していても印面のないステーショナリーも存在する。

切手の発行主体は郵便業務を管轄する国家機関や公共事業体。ほかに運送業者が切手同様の類似商品券を発行する場合もあるが、通常は切手とはいわず「ラベル」とされる。これは国際的な郵便ネットワークを統括する国際組織である万国郵便連合(UPU)に加盟している郵便事業体[注釈 5]が発行するもののみが切手として公認されているためである。

そのため、かつてはUPUに未加盟の国の切手は国際郵便に使用できないとされ、郵便物交換の協定を締結しているUPUの加盟国を経由して発送されていた。現在では多くの国々がUPUに加盟しているためそのようなことはない。ただし中華郵政のように国際的未公認の中華民国(台湾)の郵政事業株式会社はUPUに未加入であるが、国際郵便に使用できるため切手と公認されている例外もある。

日本で最初に発行された切手は、1871年(明治4年)4月20日に発行された竜文切手であり、48文、100文、200文、500文の計4種である。この当時はまだ通貨改革が行われていなかったため、江戸時代の通貨による額面表示がなされていた。翌1872年(明治5年)には「銭」の単位に変更された竜銭切手が発行された。なお、前2者をあわせて竜切手と呼称する。1883年(明治16年)には「円」の単位が表記された切手が発行された。

日本切手では、戦前は「大日本帝国郵便」と表記されるとともに菊花紋章が入っていたが、戦後は「日本郵便」と表記されるようになった。また1966年1月以降に発行された切手では、ローマ字による国名表記を求めるUPUの決定に従って「"NIPPON"」と表記されている。

日本でこれまでに発行された切手は、『さくら日本切手カタログ2018』に掲載された分だけで約8,100種類に達し、その後も増え続けている。日本郵便株式会社の切手・葉書室には7人の切手デザイナーがおり、新たな切手を毎年発行している。形も長方形だけでなく、中には円形やハート型、キャラクターをかたどったもの[注釈 14]など多種多様である。下記は日本で発行された、主な切手の種類である。分類は、発行目的によって区分した。

普通切手

普通切手は、郵便料の納付を主目的に発行される切手で、通常切手とも呼ばれる。1円から500円まで用意されている。需要の少ない額面の切手は郵便局の窓口、コンビニエンスストアなど日本郵便から委託を受けた郵便切手類販売所に常備されていないことがある。局内や内の庫などから取り出すためしばらく待たされることがあるほか、時間外(ゆうゆう窓口)においては、販売所によっては「窓口(舗)に在庫がない」という理由で購入できない場合もある。

グリーティング切手

春夏秋冬の季節ごとに発行されるシールタイプの切手で、それぞれの時期に合わせたデザインである。販売期間が限られている点が普通切手とは異なる。

『ドラえもん』をモチーフとしたものもある[7]。また、2012年秋以降春・秋のグリーティング切手には、日本郵便オリジナルのキャラクターであるぽすくまが登場する。

写真付き切手・フレーム切手

切手に付随した箇所に写真やイラストなど任意のデザインを入れることができる切手である。任意のデザイン部分は切り離しでき、切手としての効力は持たない。

記念・特殊切手

記念・特殊切手は、国内外の行事の記念、宣伝、キャンペーン、文化財の紹介などの意図をもって発行される切手である。年賀切手や国際文通週間切手のように毎年同時期に発行されるものや、シリーズとして発行されるものもあり、これらを収集家は恒例切手と呼ぶ場合もある。使用目的は普通切手と同様であるため、諸外国では通常切手と区別したカタログ番号を与えていない場合も多い。なお、日本の最初の記念・特殊切手は 、1894年(明治27年)3月9日に発行された明治記念(2銭と5銭の2種)である。

ふるさと

ふるさと切手は、ふるさと振興の意図で地域の風物や行事をテーマにして発行される切手である。

寄付切手

寄附切手は、公共的な目的への寄付分を切手の額面に付加して販売される切手である。切手の販売額の一部が寄付に活用され、寄付を除く額部分だけが郵便に使用できる。一般に、切手額面のほかに寄付額を示す数字を「+」の記号で示し、切手には「80+10」などと表示される。日本最初の寄付切手は、1937年発行の愛国切手であり、飛行場建設を目的としていた。年賀切手では1991年以降、寄付つきが毎年発行されている。

例:阪神・淡路大震災寄付つき切手趣味週間(1995年)、長野オリンピック冬季大会募(1997年)

電子郵便切手

1981年からサービスの始まったファクシミリを使い郵便物を送付するレタックス(電子郵便)専用の切手。1984年および1985年に額面500円の専用切手[注釈 16]が発売されたが、前者については後者が発売された時点で販売打ち切りになったため、流通量が少ない。昭和時代晩期から平成時代初期にかけて、大学などの受験生への合否通知(合格者の受験番号表)に多く使われた[8]が、インターネットなど他のメディアが発達したため、サービス自体使われることが少なくなった。そのため、その後は消費税導入など料改定が行われても、そのときの料に対応した電子郵便切手の発行は行われなかった。

在外国局切手

日本の郵便局が1876年以降に朝鮮および中国の各地に開設されていた。これらの在外国局で当初は日本切手がそのまま販売されていたが、為替相場の差益目当てに在外国郵便局で購入し内地で売却する投機が行われたため、それを防止する目的で、1900年から販売地域を加刷した。

在朝鮮日本郵便局では「朝鮮」の文字を加刷したが、1900年1月1日から1901年3月31日までしか使用されなかった。そのうえ1905年に当時の大韓帝国の行っていた郵政事業および電信事業を「日韓通信業務合同」の名の下に日本政府が接収したため、1910年の日韓併合を待たずして日本切手がそのまま使用されることになった。

中国(清朝および中華民国)では「支那」の文字を加刷した。在中国の日本郵便局は長期間活動したため、用紙の違いなども含め49種類の切手が発行された。最終的に1922年12月31日に在中国局が廃止されるまで使用されていた。

軍事切手

軍事切手とは軍人が郵便物を差し立てる際、差出通数の管理などを目的に貼り付けさせる切手である。日本を含め、この制度の対象とされたのは下士官兵である場合が多く、将校については通数を問わず有料とされた。日本の場合、20世紀初頭に中国,台湾や朝鮮半島、関東州や南洋諸島に駐留していた大日本帝国陸海軍の下士官兵士に、月2枚支給されていた。封書で使用されるのが原則であり、重量便は取り扱わないことになっていたが、実際にはそのような使用例も存在する。切手自体は、当時の普通切手に「軍事」の文字を加刷したものである。 1910年から 1944年まで使用され、収集家は台切手と加刷された文字の形式をもとに6種に分類している。

これ以外に、1921年に中華民国青島市で、正規の軍事切手の配給が間に合わず、現地郵便局[注釈 17]が手持ちの「支那」切手へ逓信省に無断で加刷し製造した「青島軍事切手」がある。

航空切手

航空切手は、航空郵便に使用する目的で発行された切手である。世界各国で発行されており飛行機や鳥といったデザインが使われることが多く、額面も総じて高額である。日本においては 1929年に発行されたが、国内における航空郵便制度が速達郵便制度に統合された1953年以降は国際郵便用も含めて専用の切手は発行されていない。日本では航空切手は普通切手と同じくさまざまな料の納付に使用できたが、一般に諸外国で発行された航空切手は航空郵便料の納付のみに有効である場合が多い。

その他の切手

その他、以下のような切手がかつて日本では発行された。

郵便貯切手

郵便貯切手とは、1941年7月1日、切手による郵便貯預入れの再開を受け、これを奨励するために発行された、切手を刷り込んだ台紙である。

この切手にはあらかじめ10銭切手(二宮尊徳を図案とする)が印刷されており、これに10銭切手4枚を貼り足し50銭とすることで預入れることができた。1943年7月9日限りで廃止されたが、すでに販売されたものは半年に限り預け入れを認めた。

選挙切手

選挙切手とは、1949年1月23日の第24回衆議院議員総選挙にあたり、候補者一人につき1,000枚ずつ交付された切手である。

この切手は当時使用されていた農婦を描く2円切手に「選挙事務」という文言を縦に加刷したもので、使用する場合は、開封郵便物に貼りつけるか、郵便局で同数の官製はがきと交換することとされた。

現在は、選挙事務所から直接発送される葉書に限り、「選挙事務」と表記された茶色の前納印が捺される。

電信切手

電信切手とは、1885年5月7日、電信料の納付のために発行された切手である。

これは、当時電信が工部省の管轄とされていたことによるところが大きく、電信が逓信省に移管されてしばらくすると、事務の煩雑さを解消するため、電信料は郵便切手で納付することになり、電信切手は1888年に廃止、1890年には使用禁止となった。

飛信逓送切手

飛信逓送切手とは、明治初期の公用無料軍事郵便に用いるため発行された切手である。

明治初期においては反政府活動が大々的に行われ、電信にかわる事前の通信手段が求められ、本制度が導入された。陸軍用・海軍用・中央官庁用・府県庁用の4つに大別され(東京都が成立したのは昭和初期の1943年)、西南戦争で多用されたが以降は激減、1917年に廃止された。

村送り切手

村送り切手とは、1875年ころまで高知県で行われていた「村送り」という通信制度に用いるため発行された切手である。村送り自体は江戸時代から土佐で行われた藩営通信制度で、公文書逓送が主であった。1872年6月1日より、この制度を民間に開放、同日、県内だけで有効な村送り切手を発行した。1872年7月に高知県内でも郵便が開業したが、その後もしばらくは並存したといわれる。

このほか、台湾地方切手、サザーランド切手、板東収容所切手などがある。

日本では発行されていない切手

郵便制度にはさまざまなものがあり、制度自体日本に存在しないもの(例:気送管郵便)も珍しくない。また、目立たせることで取扱を円滑に行うことを目的に、専用の切手を発行することがある。

速達切手

沖縄の速達切手(1950年)

速達切手(Special/Express Delivery Stamps)は、速達料の支払いのために発行した切手である。

速達での配達の意思表示とみなされ、たとえ料が不足していても速達料が支払われていれば速達で扱われることもあった。日本では発行されていないが、唯一の事例として第二次世界大戦後のアメリカ合衆国による沖縄統治時代における琉球郵政庁が1950年2月15日に一度だけ発行した5B円切手がある。

書留切手

書留切手(Registry/Registered Stamps)は、書留料の支払いのために発行した切手である。おおむね高額な額面であった。

書留を示す文字として "R" が国際的に用いられていることから、これを大きく描く切手もある。書留番号表を切手が兼ねていた例もある。

公用切手

公用切手(Official Stamps)は、官公庁の郵便料の支払いのために発行した切手である。多くの国では一般人も購入することは許されていた。

官庁別にそれぞれ個別の切手を発行する国もあれば、同じ公用切手を多くの省庁で共用する国もあり、その形式はさまざまである。また、アメリカ合衆国郵政公社は1980年代から同切手の発行を再開、収集家向けに公用切手を販売しているが、使用できるのは空軍や農務省など、一部の連邦官庁に限られた。同切手は、一般人が使用した・職員が私用した場合、300ドルの罰刑となる旨の警告文が印面に加えられている。

フランスが発行するユネスコ用の切手や、スイスが発行していた国際連盟用の切手もここに分類される。国際連合発行の切手(国連切手)も、その発行母体を考えると、ある意味このカテゴリーに加えることができる存在である。ただし、国際連合の切手は一般人も国連本部などにある郵便局から郵便物を発送すれば使用できる点が異なる。

新聞切手

新聞切手(Newspapers Stamps)は、新聞を郵送する料支払いのために発行した切手である。

新聞の郵便料は一般に低額であることから、新聞切手も低額のものが発行されることが多い。しかし、その郵送量が莫大であるために、現在の料別納などの制度と類似した形で、あらかじめまとめて支払われることもあり、このような場合には高額の切手が必要とされる。なお、類似したものとして新聞税切手があるが、こちらは新聞への税を徴収することが目的であり、実態は印紙に近い。

不足料切手[編集]

不足料切手(Postage Due Stamps)は、未払いや不足の郵便料など、郵便局が受取人から徴収するあらゆる銭の徴収のために発行した切手である。

会計を明確にする必要から、この種の切手を発行している。また不足料切手は、もっぱら実用の目的で発行されているため、額面数字を大きく示すなどのスタイルをとっており、簡略化した図案が多く国名を省いたものも少なくない。日本ではこの種の切手は通常切手で代用していたが、現在では料不足の付箋が使われている。

郵便税切手

郵便税切手とは正規の郵便料とは別に、郵便物自体に課税、その税を徴収するため郵便物に貼りつけさせる切手。課税目的であるため実質的には印紙の一種ともいえる。中南米諸国やユーゴスラビアでは数多く発行されていた。目的は必ずしも公共の目的ではなく、財政赤字の補填を目的とすることもある。またユーゴスラビアではサラエボオリンピック開催費用の郵便税切手が発行されたこともある。著名なものに1948年のベルリン封鎖では西ベルリン市内で発送される郵便物に、空輸費用捻出のために添付が義務づけられた郵便税切手がある。類似したものとして戦時税切手があり、こちらは戦費捻出のために発行される。

これら以外にもさまざまな切手が発行されており、そのような切手切手カタログでは後半にまとめられていることから、"Back of the Book" と総称される。

切手の販売・購入

日本郵政株式会社は、郵便局、日本郵便株式会社から委託を受けた郵便切手類販売所のほか、直営のオンラインストア「切手SHOP」で切手を額面の額で販売している。これ以外に、金券ショップやインターネットオークションなどで切手が額面より安く販売されたり(2019年10月からは消費税が8%ではなく10%になっているので金券ショップであれば売値も高い)、希少な切手が高額で取引されたりする。日本では切手収集熱が一時より冷めたため、以前は高額のプレミアムつきで売買されていた昔の切手が額面より安く売買されたり、販売初日に売り切れることが多かった記念切手が郵便局で発売後も長く買えたりすることも珍しくなくなっている。

切手収集

手紙の表面で目立つ存在であるため、単なる料支払済の証明の意味を超え、古くからさまざまな図案が施されてきた。デザインも国家元首の肖像や国章といったデザインから風景や動植物が登場し、さらに印刷技術の進歩にともない、絵柄の美しいもの、バラエティに富んだものが発行されるようになり、世界各国で多くの人々が、趣味として切手を収集(蒐集)している切手収集(郵趣)が盛んになった。

そのため国によっては、切手の発行が収入源となっていたり、実際の郵便規模に比しても過剰な量の切手を発行することが行われるようになった。そのため、国家規模が小さなサンマリノ、リヒテンシュタイン、ツバル、グレナダといった国々では国家収入に占める切手の販売収入の割合が無視できないほど高いほか、郵便事業の赤字補填のために切手収集家に便宜をはかる国も少なくない。また国際的行事(近代オリンピック)に便乗して発行する場合のほか、人々の関心を集めるような美しいデザインの切手を発行する場合もある。そのため、中には1980年代に共産主義国である朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)でイギリスのチャールズ皇太子成婚を記念する切手が発行されたこともあった。ただし、収入源として切手に目をつける行為は今に始まったことではなく、たとえば明治時代初期の日本では、海外からの注文に応じて当時の普通切手を増刷、未使用のシートのまま輸出していた。

自国で切手の製造を行えなかったり、国際切手市場にアクセスする術を持たない国もあり、その場合はエージェント(企業)に切手の製造・販売を行う権利自体を与える場合もある。その中でも象徴的なのが、1960年代から70年代にかけて、現在はアラブ首長国連邦の構成国となっている首長国が発行していた「土侯国切手」である。7首長国のうち5か国は切手発行権をエージェント企業に委ね、その結果これらイスラム教国では発行されるはずもないヌード切手などが乱造濫発されたため、世界中の切手収集家からひんしゅくを買った。こうした事情から長らく土侯国切手を採録しない世界的な切手カタログも存在したが、2010年代後半より評価は変化しつつある。

切手の状態

切手は元来郵便物に使用されることを前提に製造されるため、当然まだ使用していない「未使用」のものと、すでに消印が押され使用された「使用済」のものが存在するが、収集家のいう切手の状態とは、その切手がどの程度きれいか、つまりダメージを受けていないかを指す。

ほかの趣味と異なり、切手収集においては使用済の状態でも切手は価値を持ち、場合によっては未使用よりもはるかに高額で取引されることもある。

以下に切手の状態を示す。

まず、未使用のみに当てはまる要素として以下の点が挙げられる。