店(みせ、たな)は、商業的な活動(商売)を行うための建物のこと。商品やサービスを提供する場所である。
商店(しょうてん)、店舗(てんぽ)、ショップとも。また、店舗の内部を店頭(てんとう)といい、店舗の経営者・責任者・主(あるじ)を店長(てんちょう)・店主(てんしゅ)、店舗で働く従業員を店員(てんいん)という。
個人または個人企業で営む店は個人商店とも称され、ショッピングセンターのような規模の大きなもの、あるいは小規模な店舗が多数入居している大型の施設は商業施設(しょうぎょうしせつ)とも呼ばれる。
ほとんどがセレクトショップと呼ばれる方法で店舗を運営しており、店舗側が複数のブランドを選択して販売している。自動車やファッションなどの分野では単独のブランドのみを扱う店舗運営もされている。
物理的な店は、経営者が自ら保有、あるいは賃借した建物や、デパート、ショッピングセンターなどのテナントとして経営する場合が多い。専用の車(自動車など)で移動しながら販売する場合もあるが、その場合は必ずその場所の管理者に許可を取らなければならない。
また、商品を買い取りしている店もある。なお、店が集まる地区については、商店街を参照されたい。
「店舗」(あるいは単に「店」)という言葉は、律令制度の伝来とともに中国から日本へと入ってきた言葉である。しかし、漢字における本来の意味は、都市に存在した邸店(今日で言うところの宿泊施設。倉庫施設を併せ持つ例が多かった)と肆舗(しほ、今日で言う商業施設に該当)をあわせて称した物であった(当時、肆舗が集まる市場の近くに商用の客のための邸店が多く置かれていたために、これらを一括して扱う事が多かった)。今日、「飯店」と言う同じ言葉であるにも関わらず、日本では(中華料理を出す)「食堂」、中国では「ホテル」(元は「食事を出す邸店」の意味、「酒店」も同様の意味)と違うものを指すのにはこうした背景がある。
日本語における「みせ」の語源は、「見世棚(みせだな)」に由来する。「見世棚」とは商品を陳列する棚のことであり、鎌倉末期より言葉自体は存在し、台を高くして「見せる」ことから「見世」となり、室町期に至って、「店」の字が当てられるようになった。中世日本において登場した見世棚による商法は、当時の中国・朝鮮には見られない商法であり、当時の朝鮮通信使の報告では、魚肉といった食べ物まで地面に置いて売る我が国と違い、塵が積もらず、見やすく、見習いたい(衛生上、商業上でよい)文化との旨で評価をしている。従って、品物を見せる棚から発生した言葉である。
店舗を開設し、商品の販売やサービスの提供を行う場合、その商品やサービスによって様々な法的規制が課せられる場合が多い。規制内容は営業を行う場所の制限、衛生設備や消防設備が必要とされる、建築物の構造、客席数の制限などがある。
日本の場合、店に関係する法規には、都市計画法(用途地域)、食品衛生法、公衆衛生法、建築物衛生法、消防法、建築基準法、旅館業法、風俗営業法、労働安全衛生法などがある。
既存の建築物を改装し、以前と異なる店舗を開設しようとしたとき、既存建築物によっては営業許可が得られない場合もあり、このような場合には、事前に専門家の調査が必要とされる。
店を畳む - 商売をやめる。
店子(たなこ) - テナント、賃借者。
なお、会社の登記において、一般にいう本社を法律用語では「本店」という。
『史記』老子・韓非列伝(第三)において、老子が孔子に対して、「(前略)よい商人は品物を奥深くしまいこんで店は空のようにしてあり、本当に立派な人は盛徳を身につけているが、その容貌は馬鹿者のようだ、とも聞いている」と(能を隠す意で)例え話を聞かせており、古代中国における良い商家の店の特徴(傍から見ると奇異に映るが良品を隠している)について端的ではあるが、語っている。
商家で働く者を「店者(たなもの)」、大きな商家を「大店(おおだな)」と呼び、また、近世では支店を持つ商人を「他国店持(- たなもち)」と称するなど、日本では店と棚は文化的に密接に繋がっている。店を構えて商売する事自体を日本では、「棚=店商い(たなあきない)」と呼ぶことからもわかる。
例えば、現在では、支店を「△△(店名)○○(地名)店(- てん)」と読むのが一般的だが、近世では、上方商人が江戸に支店を構えた場合、「江戸店=棚(- たな)」と読むように、前近代では「てん」ではなく、「たな」の読みが一般的である。
店を「たな」と読む例として、松尾芭蕉の『薦獅子(すすめじし)』(冬)の一句に、「塩鯛の 歯ぐきも寒し 魚(うお)の店(たな)」(魚屋の棚上に鯛が歯ぐきをむき出しているが寒々とした感じに見える)がある。